彼女連れの頚損男性に出会ったせいで衝撃と嫉妬と可能性を感じた話

車椅子 男性 イラスト日常

ごきげんよう、まさきちです。

30年以上前に交通事故で頚髄(首の骨の神経)を損傷しました。

手術から数か月後に、やっと一人でベッドから車椅子に乗り移れるようになりました。

一生車椅子で生きていかなければならないという運命は受け入れたものの、将来に対する不安や悩みを抱えながら毎日を過ごしていました。

今回は、彼女を連れた頚損の男性に出会ったことで目の前が開けた話です。

日曜日の訪問者

ある日曜日の午後でした。

日曜日はリハビリがないので、病室でスケッチブックに落書きでもしながらのんびり過ごしていました。

病室は四人部屋で、三人が脊損患者で僕だけが頚損患者でした。

そこへ車椅子に乗った若い男性が訪ねてきました。

Aさんとします。

同じ病室にいるYさんのお見舞いでした。

Aさんは僕が転院してくるちょっと前に退院した人だそうで、Yさんとはだいぶ親しい様子でした。

Aさんは当時21歳だった僕より何歳か年上で、精悍な顔つきをした男性でした。

そして、僕と同じ頚損でした。

同じ頚損なのに、この違いは何だ

Aさんは、かっこいい自分の車椅子に乗り、清潔感のあるかっこいい服装をしていて、自分の車を運転してお見舞いに来ていました。

あとで聞いた話ですが、フルタイムではないけど仕事もしているということでした。

しかも、ひらひらした赤いミニスカートをはいたかわいい彼女も連れてきていました。

僕は衝撃を受けました。

ミニスカートから出ている彼女の太もものまぶしさに、ではありません。

ごめんなさい、正直いって少し衝撃を受けました。

入院生活が長くなっていたので、若い女の子に対する免疫力が落ちていたのです。

僕が衝撃を受けたのは、何もかもかっこ良いAさんにです。

こちらも正直にいうと、衝撃と同時に嫉妬も覚えました。

同じ頚損で同じように指がフニャフニャなのに、この違いは何だ、と。

僕は病院から借りている古くて重い車椅子に乗り、病院のパジャマとジャージを着て、やっとベッドから車椅子へ移乗ができるようになったばかりの状況でしたから。

衝撃と嫉妬と可能性

もちろん、かわいい彼女なんていません。

正確にいうと、交通事故に遭う前に付き合っていた彼女との別れがほぼ確定したころだったと思います。

今でこそ笑い話として語れますが、当時は本当につらい出来事でした。

なので、「けっ、女なんか一生いらんわ!」と少々やさぐれていた時期でもありました。

とかいいつつ、若い女の子(しかも人の彼女)の太ももにドキドキしているのですから節操がありません。

僕はAさんに出会ったおかげで、衝撃と嫉妬と同時に『可能性』を感じることができました。

「がんばれば、僕もこの人のようになれる!」

障害レベルはほぼ同じなので、Aさんができて僕ができない理由はないと思いました。

リハビリで得られる恩恵を完全理解

Yさんとのおしゃべりに少しまぜてもらっただけで、Aさんから特にアドバイスや励ましの言葉をもらったわけではありません。

しかし僕にとっては、頚損の車椅子乗りが普通の若者らしく生活している姿を目にすることができただけで充分でした。

リハビリ(OT)の先生から、僕の障害レベル(頚損C6)でできることを最初に聞いていましたが、できることでどういう恩恵(ベネフィット)があるかまでは聞いていませんでした。

聞いていたかもしれませんが、僕がまだ理解できていなかったのかもしれません。

しかしそのとき、Aさんの姿を見たことで、リハビリをがんばることで得られる恩恵を完全に理解できたと思います。

現在のようにインターネットがあれば、多くの有益な情報をもっと早く知ることができたのでしょうが、30年前の地方の病院では、同じ障害を持つ人かリハビリの先生から情報を得るくらいしか手段がなかったのです。

同じ病棟に頚損患者はいましたが、高齢の方ばかりだったので話す機会もありませんでした。

颯爽と走り去ったシルビア

Aさんはデートの途中でした。

これから行くところがあるというので、見送りついでに車を見せてもらうことになりました。

Aさんと彼女のあとをついて、Yさんと一緒に病院の駐車場まで行くと、かっこいいスポーツカーが停めてありました。

確か、5代目シルビアだったと思います。

黒く輝く車体にAさんは上手に移乗して、颯爽と走り去っていきました。

走り去るシルビアの後ろ姿を眺めながら、頚損も2ドアの車に乗れるんだ、と妙なところに感動したことを覚えています。

当時は『ピアカウンセリング』という言葉を知りませんでしたが、今思えば、あれも『ピアカウンセリング』みたいなものだったのでしょう。

Aさんと出会ってとりあえずの目標ができた僕は、さらに熱を入れてその後のリハビリを取り組みました。

以上、「彼女連れの頚損男性に出会ったせいで衝撃と嫉妬と可能性を感じた話」でした。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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